先日Spinefarm Recordsとの契約が英日共に発表された。
英国に来て3年目。
多くの人々との出会いがこうして繋がり、新たなるスタートを切れることを心から嬉しく思うと同時に、身の引き締まる思い。
そう。武者震いがする。
14歳でギターを初めてエレキギターを弾いた時、世界旅行の切符を手にいれたような気がして胸が踊ったのを今も鮮明に覚えている。
まだ故郷の高崎には新幹線など通っていない頃だ。
緑豊かな季節がくるとカエルの合唱が響き渡る、空高く土の香りがする良き時代。
東京だって遠い遠い憧れの大都会。
そんな群馬の片田舎から世界を夢見れたのも、あの日ギターを弾いたから。
ギターが発するスピリチャルな響き。
ギターの音には様々な声がある。
「叫び声」「笑い声」「泣き声」「怒鳴り声」「囁き」「うめき声」「つぶやき」「ため息」「捨て台詞」「喘ぎ声」「恍惚」「狂乱」「ジョークや皮肉」...
「無言」だってギターの声のひとつだ。
シンガーではなくギタリストへの道を選んだのが、僕のアドベンチャーの始まりだ。
「音」という「声」に全てを賭けたくなった。
男が一度でかい夢を見てしまったのだからしょうがない。
追いかけるしかないだろ?
バンド、青春時代、成功や裏切り、出会いや別れ、決して順風満帆だったわけではなく、喜びの向こうにはいつも悔しさが待ち構えていた。
しかしそんなすべての感情が僕の創作の源であり、若さという吹き荒れる風の中にいる限り、僕の音が枯れることはなかった。
東京で過ごした30年という年月が、それを優しき風に変えてしまった。
今まで味わったことのない焦りと無力感に襲われた。
そして選んだロンドンでの生活。
夢に向かって走っていないと、ギターを弾いてる理由がなくなってしまう。
自分がロッカーだということの説明がつかなくなってしまう。
そして今、群馬の空によく似たロンドンの空の下、あの頃と同じ気持ちでギターを弾いている。
世界へ。
「お前が本気なら、ひと肌脱ごうじゃないか」
とイギー・ポップが「How the Cookie Crumbles」をシングルとしてリリースすることを快諾してくれた。
ギタリストであるからこそ実現したこの夢のようなコラボレーションから僕の第3章が始まる。
物語は今後どう展開してゆくのか、僕にも誰にもわからない。
しかしきっと面白い展開になるに違いない、と信じてくれている人々がそばにいることが嬉しく心強い。
きっと夢を叶えてみせる。
近況といえば、対談から親交を深めたAndy Gillのバンド"Gang of four"のアルバムに参加し、ロンドンでの小さなギグに飛び入りしたり、旧友の元ジグ・ジグ・スパトニックのギタリスト Neal Xの新バンド"The Montecristos"のライブで"C'mon Everybody"など2曲弾いたり、Roxy MusicのAndy Mackayとアブストラクトでプログレッシヴなセッションを重ねたり、日本ではCharさんの還暦をお祝いするアルバムに参加したりと久々にギター小僧している。
「How the Cookie Crumbles」の6月15日のイギリス及びヨーロッパ配信に向けての準備、そして秋を目標にワールド・リリース・アルバムの制作など、イースターホリデーがあけた今週からいよいよ本格的に動きだす予定だ。
(なんせホリデー中は誰も働かないのです)
ロンドンにも春がきた。
今年の春は僕にとってもスタートの時。
ピカピカの小学一年生を見習って、胸を張って堂々と進もう。