「ザ・キャラクター」を観た。
怖るべし、野田秀樹。
怖るべし、宮沢りえ。
怖るべし、野田組!
膨大な量の言葉が役者たちの魂をまとって、舞台から客席に津波のように押し寄せてくる。
捩れた物語が時空を歪ませ、観客を強引に迷宮へ引きずりこむ。
観客は竜巻のような大きなうねりに身を任せるしかない。
最後のセリフが終わり暗転となる。
再び舞台が明るくなり、宮沢りえさんのシリアスな表情が浮かび上がる。
長距離ランナーのゴールのような瞬間。
燃え尽きた者だけに与えられる気高く美しく静かな微笑みは、勝者の威厳をも兼ね備えている。
あまりの衝撃と感動に、しばらく身動きができないほどだった。
終演後楽屋に御挨拶に伺うつもりだったが、
「私、今、りえちゃんに会えない...」と美樹さん。
その気持ちは自分も同じだった。
「お疲れさまでした!素晴らしかったです!」
というありきたりな言葉でこの感動を汚したくなかった。
素晴らしい芸術に触れた時、人は無口になる。
心、意識、脳内に広がる、美しく、時に恐ろしい残像に羽交い締めされ言葉を奪われる。
平常に戻るにはしばし時間が必要だ。
この舞台を創造した野田さんをはじめ、この舞台に関わった全ての人々を
心から尊敬します。
究極の表現を目の当たりにし、倒れそうになりました。
媚びないエンターテインメントは、紛れもなくロックでした。
チャンスがあれば、是非ご覧になることをお勧めします。
舞台は絵画だ。
音楽は旅だ。