各方面で絶賛されたドキュメンタリー映画「ANVIL」を、遅まきながらDVDで観た。
噂通りのいい映画だった。
30年間、夢をあきらめず追い続けるメタル・バンド。
男同士の友情、家族の愛、音楽を奏でる楽しさと苦しさが生々しく伝わる。
30年は短い時間ではない。
しかし過ぎてしまえばあっという間の時間でもある。
自分も気づけば48歳。
18歳の時に48歳の自分を想像することはできなかったけど、
あれから30年も経ったとは信じがたい。
昨日のようだ、とは言い過ぎにしても、遠い昔の記憶ではない。
人生は誰と出会うかによって大きく変わる。
バンド仲間との出会いがなければ、今の自分はいない。
家族、友情、恋、裏切り、成功、挫折、別れ...。
最中にいるときは気づかぬものの、後に振り返るとすべてが必然のようであり
「人生」と「運命」は常に並列に進んでいることを実感する。
不平不満を言っても、我々はその二つに守られ、そして常に試されている。
目の前には多くの選択肢があっても、それらはいつも2つに集約され、そのどちらかを選ぶのは自分しかいない。
間違った方を選ぶ可能性も五分と五分。
大人になれば今までの経験からリスクの少ないほうを選ぶようになる。
が、それが正しいとは限らない。
大きく変わってしまった音楽産業。
必ずしも良いものが受け入れられるわけではない。
次の世代にとってもロックはまだ夢のある世界であり続けるだろうか?
自分はこれからどうやってこの険しい時代をサバイバルしてゆけばいいのだろう?
そんなことを考え、少し憂鬱になりながらも
「いや、誰かに頼まれて音楽をやっているわけではない。
やめろと言われても俺からギターを奪ったら何が残るというんだ?
これは自分が選んだ道。はじめから険しいと知っていながら選んだ道だろう?」
主人公の二人の傷だらけの笑顔が語るものは、どんなに上手く作られた台詞より深く清く痛い。
「人生に勝ちも負けもない」と、当たり前だけど誰にも言えない本当のことを教えてくれる。
映画を見終えたまさにその瞬間、携帯の着信音テレグラム・サムが鳴った。
ディスプレイには「辰吉丈一郎」。
「『座頭一』の試写会に行ったらプロデューサーから「布袋さんが怪我した」と聞いて、ビックリして電話しました」
「もう治っちゃったよ。幸い後遺症もなく、前よりギターが上手くなったよ(笑)。
で、そっちはどうだい?」
「僕ももうすぐ40です。だけど、今すぐリングに呼ばれてもやれるように、毎日しっかりトレーニングしています。
任せてください!」
人生は一度きりの夢。
叶うか叶わぬか。
諦めるか諦めないか。
やるか?やらないか?
ANVILと辰吉の嬉しい偶然にのせて俺も言おう。
『やるしかない』。