雨の日曜日は決して憂鬱ではない。
中学生の頃ベッドに寝そべってぼんやりと、ただぼんやりと窓の外の雨を見つめながら
一日中レコードを聴いていた記憶が蘇る...。
難解ながらも異次元の世界に心を誘ってくれたプログレのレコード。
YES、KING CRIMSON、EL&P、CAMEL、P.F.M.、FOCUS、PROCOL HARUM、などなど名前を挙げるだけで懐かしい。
少し背伸びして大人になった気分で聴いたメロウな音楽。
ルパート・ホルムズ、スティーブン・ビショップ、ニック・デカロ、マイケル・フランクス、アル・ジャロウ、ロビー・デュプリー、アベレージ・ホワイト・バンド...。ソフトな管楽器と甘いエレクトリック・ピアノ。雨粒がワルツを踊った。
楽譜もない。ビデオもない。YOU TUBEもない。ギターの先生は数々のロックの名盤。
例にもれずDEEP PURPLEやZEPPELINの名曲を耳コピーした。
レコードはCDのように頭出しなど出来ず、盤に傷をつけないようにそっと針を落とし、一音一音手探りでフレーズを追いながら狭い部屋は大きなコンサート会場と化した。
AEROSMITH、KISS、グランド・ファンク、AC/DC...。
ハードに歪んだ音だけではモノ足らず、黒人のファンク系のギタリストもよくコピーした。
レイ・パーカーJr、ワウ・ワウ・ワトソン、ジョニー・ギター・ワトソン、EW&Fのアル・マッケイ...。
ストラップをかけて踊りながら練習したものだ。
カーリー・サイモン、ジョニ・ミッチェル、キャロル・ベイヤー・セイガー、ブリジット・フォンテーヌ...。
女性ボーカルのアルバムもよく聴いた。
歌詞カードの対訳と聞き慣れない英語を必死で結びつけ、洋楽のレコードは僕の英語の先生にもなってくれた。
「昔は良かった」と言うのは未だ抵抗があるが、確かに「昔は良かった」事柄も少なくない。
その最たるものがこの「ボーッとする時間」なのではないかと最近つくづく思う。
ボーッとしながらも携帯電話がそばにあり誰かからのメールを待っている。
テレビやネットからは無数の曖昧な情報が絶え間なく発信され続ける。
最高の癒しは何かと雑誌をめくり、癒される場所を必死で探している。
公園には無言でゲームに没頭する子供達がいる。
昔は時間を持て余す余裕があった。それは一番贅沢な時間と言えたかもしれない。ただボーッとすることの幸せ。
そんな時間は音楽と二人きりになって、感性という心の花にたくさんの水を与えてくれた。
人間とは不思議なもので満たされようと必死になればなるほどそれは叶わず、自己を解放してオープンマインドした状態になればなるほど、心と身体は満たされるものだ。
雨の日曜日は休息の日であると共に、自分を潤す絶好のリラックスチャンスだ。
さて今日は何を聴こうか。
そうだ、久しぶりにドゥルッティー・コラムの「WITHOUT MERCY」を聴こう。
そんな気持ちを書き連ねているうちに、雨は止んでしまった。